今回のオーダーでは、
古刀の雰囲気を残す反りの高い備中刀をベースにした刀身に
黒基調の渋好みな拵で、柄紐・下緒は紫、
細かい部品の意匠は桜で、とのご指定でしたが、
「もし出来るなら」と追加でご依頼いただいたのが
この特徴的な鞘の変わり塗りでした。↓
この模様、元久保田藩主佐竹家伝来の「虎徹」で
最上大業物と言われる脇差の拵にあった波模様を参考にしたのですが、
その御刀を取り扱ったサイトの説明によると、「現代では再現困難な技法」。
つまり当の漆の塗り方が現代に伝わっていないのです。
一体どんな事をしたらこんな模様が・・・?と
試行を重ねつつ調べてみましたところ、
どうやら「時雨塗」の応用であるらしいことは判明しましたが、
立体物である鞘の全面に細かい筋を描き入れなければならないため、
大小の鞘それぞれに専用の回転台を誂えた上での作業という、
大変手間がかかるだけでなく、長時間の緊張を強いられる技法でした。
さすがお大名道具の虎徹、並々ならぬ拵を誂えるものなんですね。
端材で練習を重ねたにもかかわらず
本番でも、塗って波を描いた漆を削り取ってまたやり直す事数回!という
とにもかくにも今までにない最大級の難物でしたが
なんとか佐竹家伝来の虎徹の拵に近い雰囲気が出せた様です。
例に寄って犬吉さん、「もー二度とやんないもん!ノ(´;Å;`)ヽ」って
泣いてますけど(^ω^;)
刀身は、大小とも現存する鬼神丸国重から写しました。
いつも「最新作即最上作」をモットーに作刀している犬吉さんですが
常々ごひいきの備中刀スタイルな事もあって
今回は特に会心の出来とのことで
なかなかに写真映えのする御刀に仕上がっています。
琴姫工房様が殊にお好みの花ということで、
鍔にはオリジナルの意匠で大胆に透かした桜の花を、
真鍮製の縁・縁頭・鯉口・鐺(こじり)には舞い散る桜の花びらを彫金、
目貫も桜の花枝で誂えて、桜づくしの拵です(^ω^)。
さらに追って御依頼いただきました号(御刀の名前)は、
桜が木花咲耶姫の御神木である事から
「咲耶」と名付けさせていただきました。
日本神話の美しい女神の名前のひとつとして有名ですが、
「咲」には古くは「照らす」という意もあり、「耶」は「邪」、つまり
この二つの漢字には「邪を照らす」という意味が備わっているのです。
奇しくも、己の弱い心を斬つ事が本懐であると謂われる日本刀には
根源的に相応しい号ではないかと思わされました。
お気に召していただけますと幸いです。
今回は、いつもの様な
オークションで大刀をお買い上げになった方に、
その揃いで脇差をお作りするという事例ではありませんでしたが
現行オークションでご活躍中のディーラー様が
お名前を明かされた上でのご依頼を、この上なく名誉に思いまして
特別にフルオーダーを引き受けさせていただきました。
とてもハードルの高い困難な仕事ではありましたけれど、
新たな技法に挑戦でき、大変良い修行になりました事を
乾犬吉ともども心から感謝申し上げます。m(_ _)m
Le Cirque du Papillonでは
原則としてオーダーはお受けしてないのですが、
乾 犬吉 作のSD用日本刀に限っては、
オークションの商品写真で大刀の傾向や仕上がりをご覧頂けてますので
揃いの拵の脇差を、ご希望によりお作りさせていただく事がございます。
ただ、その際には結構しんどいお願いがございますので
まずは
こちらをご一読下さいませ〜。
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■2014/9/15, 2014/9/24 追記
琴姫工房様のブログにて、『咲耶』をご紹介いただきました。
■琴姫工房/日本刀・大小揃『咲耶』 (9/15 春霞編)
■琴姫工房・こと日記(魔界への誘い♪) (9/24 秋の狂宴編)
新作お着物をお召しの沖田さんが眩しいです(*´ω`*)**
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琴姫工房様のブログへぜひお運び下さい。
素晴らしい作品のお写真満載です♪