実物は刃長だけで二尺六寸四分(約80cm)ということですから
拵込みの全長は1mを優に超えるはずの「三日月宗近」は
大太刀にも分類できる長尺の御刀。
それをSDスケールで、17少年が佩いても見劣りないように作りましたら
全長49.2cmという大迫力サイズになってしまいました。
このずば抜けて大きな御刀を飾るのに
いつもの掛台ではなんともバランスがよろしくないので
今回は掛台をひとまわり大きくお作りしています。
太刀拵の御刀には、多くの場合
立て掛けるタイプのお飾り台が付くものですが
「三日月宗近」は豪華絢爛な拵にも増して
なにより刀身の美しさが身上ですので
両方を一度に楽しめる横二段の掛台にしました。
天下五剣の中で最も美しいということは、
つまり世界一美しい日本刀ということ。
そんな御刀を元にしているので当たり前ですが
写した今作も相当の美しさです。
細身で高い腰反りのフォルムも優美な刀身に
所により二重三重に入るという小乱れの刃紋を忠実に写し、
その名の由来となった三日月型の打ち除けも、
ちゃんと見る角度によって顕れるようにお入れしています。


人形刀匠 乾 犬吉作・日本の名刀写の中でも
これはまちがいなく最上作大業物となりましょう。( `・ω・´)*
刀身や、最多記録を更新した金具類も手間がかかったようですが、
今回トリコもえらい難儀させられました。鞘の紋に(TωT)。

人間用の模造刀ではちゃんとしたものを見たことがないのですが
蒔絵は工業製品では実質不可能である上に、このデザイン。
オミットしたい気持ちがわかります。
菊花紋4種(20弁一重、16弁二重・三重・四重!)と七五の桐紋が、
片面に17コも入ってるという凶悪な鞘でございましたよ。
しかもSDスケールだと約1/3ですから、1つの紋の径が約11mm!
それを漆で描き写し、乾かないうちに金箔を貼り付けるという
正確には蒔絵でも沈金でもなく、箔押しという技法を使いましたが
両面で34紋の手描きは、なかなかのハードパンチャーでした。_:(´ཀ`」 ∠):_
この紋ひとつひとつも、ネットによく転がっている
一般的な家紋の意匠とは微妙に違いますので、
すべて自前で描き起こして実物通りにレイアウトし、
入念に下絵を作ったのです。

ちなみに今回の商品画像の縁飾りは、このデータの流用です(^ω^)
そして、初めての本格太刀拵の御刀をご紹介するのに
江戸時代劇風武家装束ではしっくり来ませんから、
今作に合わせ、平安風の撮影衣装も新しく誂えました。

上衣は清少納言も大好き白の狩衣。
こちらは透け感のあるバンブーの布で作りました。
竹繊維ってバリバリしてるのかと思ったら、
とてもしなやかでポーズが付けやすく
アイロンはビシッとかかるのに皺になりにくいという
撮影衣装にはなかなか具合のいい素材なんですね。
指貫(さしぬき=奴袴)は赤茶のシルクタフタに金糸の花紋が入った
古い豪華な帯地です。
本来、若い人が履く指貫は紫系がスタンダードなのだそうですが、
まあそこはそれ。
有職故実を煩く言うお人形さんはいませんし(^ω^;)。
こんな具合のいい大きさの紋入り生地は滅多に見ませんから
商品に使いたいくらいなのですが、
帯に仕立てていた時の折り目が擦り切れかかってるという
なんとも痛みのひどい古布でしたので撮影用に。
傷んだ部分をヒダの下に隠れるように当てて作ったら、
買い集めたハギレ3枚で分量ギリギリでした。
10歳設定のSD少女さんだから足りたものの
17少年さんなら普通のお袴に仕立てるしかなかったかも。
立ち烏帽子は接着芯に黒のリネンを貼り付け
左右を縫い合わせただけの俄か作りです。
また太刀拵の御刀が出来た時は、もっと本格的な薄物の烏帽子や
侍烏帽子も作りたいな〜(*´ω`*)
などと話してましたら、犬吉さんが
「兼定があと180年作りたくないくらいだから
三日月宗近なんかもー1000年は作りたくないノ(´Å`)ヽ」なんて言いますのよ。
興味しんしんで手がけたは良いけど、
それくらい難儀な御刀でしたという事で。(^ω^;)
